音楽と一体になるための「重要なカウント(S)」
社交ダンスを踊っていて、「なんだか忙しい」「音楽と動きがズレてしまう」と感じることはありませんか。あるいは、先生やパートナーと踊っている際、自分の足がどうしても早く出てしまうという経験があるかもしれません。
実は、その悩みの原因の多くは、カウントの「スロー(Slow)」の捉え方にあります。
特にパーティーダンスとして親しまれている「ジルバ」や「ブルース」において、この「スロー」をどう扱うかが、心地よく踊り続けるための最大の秘訣です。今回は、初心者の方には「安心して踊るためのコツ」を、上級者の方には「ワンランク上の表現力」を手に入れるヒントをお届けします。
ダンスの良し悪しを決める「2拍」の長さ
ジルバもブルースも、基本のリズムは「スロー・スロー・クイック・クイック(SSQQ)」です。多くの方は、足の運びが速い「クイック」の部分に意識を向けがちですが、ダンスの質を決定づけるのは「スロー」です。
4/4拍子の音楽において、スローは2拍、クイックは1拍です。つまり、スローはクイックの2倍の長さを持っています。
この「2拍分」を単に待つのではなく、十分に味わって使うことで、心と体に余裕が生まれます。その余裕こそが、「忙しないダンス」から卒業し、優雅に踊るための第一歩となります。
初心者の方へ:焦らず「待つ」ことが上達の近道
始めたばかりの方が最も陥りやすいのが、「次のステップを早く踏まなければ」という焦りです。 口では「スロー」と言っていても、体がつい反応してしまい、本来まだスローの途中であるはずのタイミングで次の足が出てしまうのです。これでは、ステップが継ぎ足しになってしまい、音楽と調和できません。
ジルバでのヒント:膝を使ってリズムを感じる
アップテンポなジルバは気持ちが急いてしまいがちです。ここでは、**「膝を柔らかく使ってリズムを取る(バウンス)」**ことを意識してみてください。
特に女性の回転ステップ(チェンジ・オブ・プレイスなど)では、「素早く回らなければ」と身構える必要はありません。スローのカウントを使い、少しゆっくりとした歩幅を感じながら移動するだけで十分です。「あっちからこっちへ向き直るだけ」という気楽な気持ちで、慌てず歩いてみましょう。自然と回転は完了します。
ブルースでのヒント:膝を緩めて準備を整える
ゆったりとしたブルースでは、**「ゆったりと歩く」**感覚が大切です。もし動きが硬くなってしまうなら、膝が伸びきっている可能性があります。
ポイントは、「クイック・クイック」で足を揃える時です。ここで膝や足首を少し曲げた状態(緩めた状態)で足を揃えてみてください。そうすることで、次の「スロー」の一歩がスムーズに出せるようになります。柔らかな床の上を歩くようなイメージを持つと、動きが滑らかになります。
上級者の方へ:スローは「テクニック」を魅せる瞬間
「最近、踊りに抑揚がない」「パートナーから『タメがない』と言われる」 そんなスランプを感じているベテランの方こそ、スローの質を見直す絶好の機会です。スローの部分は単なる「長い休み」ではありません。高度なテクニックを凝縮できる、表現のための時間です。
肩甲骨を寄せたり、胸の厚みを整えたりするのも、このスローのタイミングが最適です。
丁寧なフットワークがリードを変える
全てのスタンダード種目の基礎となるブルースで、足の裏の使い方を確認してみましょう。
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前進はヒール(かかと)から
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後退はつま先から
シューズの裏が、まるで半円を描くように、かかとからつま先まで徐々に床と接していく感覚です。下駄を履いている時のように、足の裏が「ペタン」と平らに床に着いていないか確認してみてください。 スローの長さを活かしてこの体重移動を丁寧に行うことで、ワルツやタンゴにも通じる「重さを感じさせない、滑らかなリード」が生まれます。
ジルバで音楽性を遊ぶ
上級者のジルバでは、スローの部分であえて「タメ」を作ったり、遊び心のあるアクションを入れることができます。 特に男性がリードをする際、スローのカウントを使って女性に次の動きを「伝える時間」を十分に取ると、女性は安心してフォローできます。結果として、二人の踊りが音楽にピタリとハマる快感を得られるでしょう。
今日のレッスンから「スロー」を味わおう
スローを制する者は、ダンスを制します。
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初心者の方: スローを「焦らず待つ時間」と捉えてみてください。音楽をよく聴く余裕が生まれ、ステップの間違いも減ります。
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上級者の方: スローを「表現する時間」と捉えてみてください。フットワークの質を高めることで、踊りに深みが出ます。
「スロー、スロー」と心の中で、あるいは実際に「すろーお、すろーお」と口ずさみながら、一歩一歩を味わうように踊ってみてください。きっと、今まで以上に音楽と一体になれる喜びを感じられるはずです。
ヒロスダンススタジオでは、こうした「体の使い方」や「音楽の感じ方」を大切にしたレッスンを行っています。基本のリズムを大切に、一緒に心地よい汗を流しましょう。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
