社交ダンスの「感覚」を言葉にする難しさ。そこから学ぶ、伝わる喜びとコミュニケーション

踊りと共に生きる中で気づいた「言葉の限界」と「心のつながり」

私たちヒロスとミスズにとっても、社交ダンスの動きや、その瞬間に感じる体の感覚を「言葉」にして伝えることは、非常に難しい課題です。

毎日のレッスンや自分たちの練習において、「この感覚をどう言えば伝わるか」「相手の言葉をどう解釈すればよいか」という壁にぶつかることが多々あります。

しかし、この「言葉にする難しさ」こそが、社交ダンスの奥深さであり、私たちが日常生活や人間関係を見つめ直す大きなきっかけになると感じています。

今回の記事では、踊りを通じて感じる「伝えることの難しさ」と、だからこそ大切にしたい「丁寧なコミュニケーション」について書いていきたいと思います。

「同じ言葉」でも、受け取る感覚は人それぞれ違う

社交ダンスのレッスン現場では、言葉の受け取り方の違いを痛感する場面がよくあります。

例えば、動きの強弱やスピード感を伝える際、「ホワッと」や「シュッと」といったオノマトペ(擬音語・擬態語)を使うことがあります。

しかし、この「ホワッと」が指す感覚は、人によって千差万別です。ある人にとっては羽のような軽さであり、別の人にとっては雲のような柔らかさかもしれません。

同じ説明、同じ言葉を使ったとしても、受け手の過去の経験や、その日の体調、あるいは聞くタイミングによって、解釈は変わります。

そして、その解釈に基づいて体を動かしてみると、結果として現れるダンスは人それぞれ全く異なるものになります。

「言葉が持つ意味は、人それぞれ違う」。この事実は、社交ダンスのレッスンにおいて、私たちが常に心に留めていることです。

だから、お客様に合わせた言葉選びだけでなく、少しでも分かりにくいと感じたら、その時その場で気軽に質問してもらえるような雰囲気を保つことが大切だと思います。

社交ダンスが教えてくれる「伝わらない」という前提

自分の思いや感覚を言語化することは難しく、同時に、相手の言葉をその真意通りに理解することもまた、至難の業です。この経験は、お客様(生徒さん)の皆様も同じように感じていらっしゃるはずです。

しかし、社交ダンスを通じてこの「難しさ」を肌で感じている方は、日常生活やビジネスの場面においても、コミュニケーションの質が高まる傾向があると思います。

なぜなら、「自分の言葉は完全には伝わらないかもしれない」「相手の言葉には別の意図があるかもしれない」という前提に立つことができるからです。

この気づきがあると、自然と言葉選びが慎重になり、相手への伝え方が丁寧になります。

「伝わらないこと」を知っているからこそ、より深く理解しようと努める。社交ダンスは、そんな心のゆとりと謙虚さを育んでくれる場でもあります。

時間を共有することで、言葉の壁を超えていく

言葉だけで全てを伝えるのは難しいことですが、社交ダンスにはそれを補う素晴らしい側面があります。それは「時間を共有し、一緒に動く」ということです。

いつも一緒に練習したり、ペアを組んで踊ったりしていると、不思議と言葉の感覚が近づいてくる瞬間があります。「あの時の『シュッ』は、この感覚だったのか」と、言葉と体感が一致してくるのです。

お互いの動きや感覚が重なり合い、言葉以上の何かで通じ合えるようになる。これこそが、パートナーと踊る社交ダンスの醍醐味であり、言葉の壁を超えた先にある喜びです。

日常生活やビジネスの場において、「なぜか話が噛み合わない」「うまく伝わらない」と感じることは誰にでもあります。それは決して悪いことではなく、私たち人間がそれぞれ違う感性を持っている証拠なのだと思います。

社交ダンスと同じように、日常生活やビジネスの場面でも、安心して話せて、安心して聞ける。そんな関係で過ごす時間が多くなれば、言葉の感覚も自然と一致してくると思います。

ダンスフロアで足並みを揃えるように、相手の言葉に耳を傾け、心を通わせる時間を大切にする。そうすることで、私たちの関係性はより豊かで温かいものになっていくはずです。

一緒に「感覚」を共有する楽しみを

言葉にする難しさを知ることは、相手を思いやる第一歩です。

ヒロスダンススタジオでは、そんな「言葉では伝えきれない感覚」を、皆様と一緒に体を動かしながら共有していきたいと考えています。

上手く言葉にできなくても大丈夫です。音楽に身を任せ、心地よい瞬間を共に探していきましょう。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。